自分を知ること;交流分析
交流分析というのは、精神科医のエリック・バーンによって提唱された心理療法の一つです。その中にある自我状態というものがあって、これはまさに言葉通り、自我、自分の状態がどのようになっているかということについてです。
自分の心の問題を探る時、自分自身に向き合う時、客観的に、自分が今どういう状態になっているかということを知ることはとても役に立つなと思います。自分のことは自分が一番わかっているようで、実は一番わかっていないということは多いです。
私自身も、心理学を勉強する中で、自分というものを客観的に見ることを知りましたし、またカウンセリングや人との交流の中において、実は自分はこんな自分になっていたんだと気づいた経験はいくつもあります。
交流分析の中では、人間の自我状態というのは大きく3つに分けられています。親を意味するペアレントのP、大人を意味するアダルトのA、子供を意味するチャイルドのCです。Pは「親」の影響を強く受け継いだ思考、感情、行動であり、Aは今ここで起こっている状態に直接反応している「成人」の思考、感情、行動で、C ...
共同体感覚の実践方法(アドラー)
前回の記事(共同体感覚の始め方(アドラー))の続きです。
「超図解 勇気の心理学 アルフレッド・アドラーが1時間でわかる本」(中野明著、Gakken)にわかりやすい図がありました。
⇩この図です。本文P109から、写真を撮りました。
面白いのが、共同体感覚が高い人というのは、『自動的に』活動性も高くなって、社会的に有用な人の位置づけになる点。つまり、共同体感覚が本当に高いなら、自然と社会に貢献しようとする思いも湧いてくるし、自然と活動性も高くなってくるとアドラーは言っているんですね。
ただの評論家や、行動をしない口だけの人を除いて、本当に共同体感覚が高い人で、活動性が低いという人は存在しないので、一つのマスが空白になっています。
社会的に有用な人になるにはさて、アドラーの共同体感覚によれば、社会的に有用な人になるためには、「共同体感覚が高く」、「活動性が高い」人になることです。
先ほども書いたように、これは、「共同体感覚」だけ高くしておれば、必然的に活動性は高くなるから、結局は共同体感覚を目指していけばいいっ ...
共同体感覚の始め方(アドラー)
嫌われない勇気(岸見一郎氏、古賀史健氏 ダイヤモンド社)では、アドラー心理学の肝となる考え方の、「共同体感覚」が紹介されています。
共同体感覚がわかると、「自分、自分、自分!!!」って考え続ける自己中心から、次第に全体の利益を優先させるようになっていって、自己中心の囚われから解放されていきます。
本当に、世の中の人がみんなが全体の利益を優先させるようになったら、世界はどういう風に変わるんだろうとワクワクします。でも、これを実現するには、「まず自分」からです。
すべての人が、「あ〜こうなったら、理想だよね!」って思うことは、結局失敗しながらでも、やってみようと努力して、前進しようとしないとどうにもならないんですね。
だから、アドラー心理学は、「自分だけが幸せになろう」という気持ちいっぱいで学ぼうとすると罠に陥ります。と言うのも、この心理学は共同体感覚を持つように言っているからです。
つまり、自分の人生を共同体のために使いなさいってこと。
そのためには、「自分が、自分が、」と考えて ...
家族問題にアドラー心理学を推奨する理由
こころの栄養.comでは、アドラー心理学シリーズで、10回の記事を発信しました。私は、カウンセリング手法として、特定の心理療法をサポートしているわけではありませんが、家族問題については、アドラーの考え方をオススメしています。今回は、その理由について書いていきます。
1、課題に分離について扱っているから家族問題というのは、多くの場合、「あまりにも密接した」関係の中で生じてしまいます。友人関係や仕事の悩みとは少し種類が違って、お互いが、いい意味でも悪い意味でも「あまりにも親密」になりすぎた為に起きてしまった問題が多いです。
「親密さ」は家族関係には確かに必要なものであるけれど、同時にこの「親密さ」ゆえに、本来は相手の領域であるにも関わらず、土足でずたずた入り込んでしまうようなことがあります。相手の問題であることも自分の問題かのようにして、次第に癒着し始め、大きな問題につながってしまうのです。
家族問題のテーマのカウンセリングは、様々なものがあります。親からひどい悪口を言われた、配偶者の浮気、離婚、依存症、DV、うつ、引きこもり、ギャンブルなど様々で ...
【心理学】箱庭療法ー心のうちを表現する
心理カウンセリングといえば、カウンセラーとの「対話」を使って自分を見ていく手法が多いですが、実はカウンセリングの種類は広義の意味では本当に様々なものがあります。あまり言葉に頼らないで自分の気持ちを表現していく、「箱庭療法」について紹介します。
箱庭療法とは何か?箱庭療法は心理療法の一つです。もともとは海外で生まれた心理療法ですが、日本でも広く使われています。ちなみに私自身は実施したことがありません。
箱庭という言葉通りで、箱というよりも、入れ物の中に砂やおもちゃ、装飾物などがあって、それを自由自在に、入れ物のなかでデザインします。山みたいなものを作ってもいいし、砂場みたいにしてもいいし、陸地と海に分けて、砂浜みたいにしてもいいです。
その表現方法は、どのような風でもよく、セラピスト(この場合は、心理療法なので、カウンセラーというよりもセラピストと呼ぶ方が一般的です。ただ、どちらでもいいです。)が見守る中、自由に創作していきます。
表現したものをベースにセラピストと言語化することもあり(しない場合もあります。)自分の頭の中で考えている ...
【心理学】交流分析ーストローク
交流分析は、対人関係にトラブルを抱える人のパーソナリティ(個性、心理状態、考え方などなど)に着目し、他者とどのように関わっているのかを分析し、個人の成長を促し変化させていくことを助けます。今回は、交流分析を構成する要素の一つ「ストローク」について見ていきます。
ストロークとは何?ストロークとは、他人の存在を認め、認めたことを表す「言動」のことです。
例えば、目の前に店員さんがいます。この定員さんの対応に満足して、つい笑顔になって「ありがとう」と言ったとします。この時、ストロークが発生しています。目の前にいる「店員さん」という人の存在を認め、それによって行動を起こしているからです。逆に、今度はこの店員さんに対してクレームをつけ、怒鳴ったとします。この時も、店員さんの存在があってこそ、怒鳴っているわけで、何も壁に対して怒っているわけではありません。この場合も、同じくストロークが発生しています。
上の例のようにストロークは、プラスストロークとマイナスストロークがあります。
プラスストロークマイナスストローク身体の動作による表現・手をつなぐ、なでる、 ...
【本の紹介】バウンダリーズ 境界線
今回オススメしたいのが「バウンダリーズ境界線(地引網出版/ヘンリー・クラウド、ジョンタウンゼント著)」という本です。
この本は、共依存について非常にわかりやすく書かれています。著者は心理学者です。聖書の引用がありますが、宗教は関係なく、キリスト教に馴染みがなくても全然、問題なく読めます。
特に、アルコール依存症、引きこもり、DVなど、家庭に深刻な問題を抱えている人が、問題を抱えた当事者とどう向き合うべきなのかについて悩んでいたら、今まで見えていなかった新しい視点に気づかされるので、とっておきの本になり得ると思います。
本書のテーマは以下のようなものです。
人は、愛に満ち献身的であろうとするばかりに、自分の限界を忘れてしまうことがよくあります。あなたも次のように思ったことはありませんか?
*限度を保ちつつ、なお愛に満ちた人であることは可能だろうか?
*私の時間、愛、エネルギーそしてお金を欲しがる人に対して、どう答えたらいいだろうか?
*境界線を引こうとするとき、罪悪感を覚えるのはなぜだろうか?
【森田療法】ーあるがままの自分で
「~でなければならない」「~できない自分に不満を感じる・・・」こんな気持ちになったことはありますか。そういう人には森田療法の考え方が参考になるかもしれません。ということで、今回は、森田療法について紹介します。
森田療法とは何か?森田療法は、日本版の精神療法の一つです。心理学というとフロイトやユングなど、海外の方が多いですが、森田療法は日本から出発して、海外でも知られています。
大学病院で精神科の医師をしていた森田正馬氏によって始められ、1920年頃に神経質者に対する「森田療法」が確立されました。
神経質者と聞くと、自分には関係ないのではないか?と思ってしまいがちですが、ここではもっと気軽に捉えて、何か自分の中で、「自分で悩みを作っているなー」とか、「その悩みを自分で大きくしてしまい、生き辛くなっているなー」と思えば、森田氏の考え方は有効です。
森田療法では、悩みや不安の原因を探して、それを取り除こうとはしません。むしろ、人生、悩みがあるのなんて当たり前、生きていく上では必須のものと理解し、その上での心のあり方を重視しているものです。 ...
【本の紹介】自信が持てない人の心理学
「自信が持てない人の心理学」(加藤諦三氏著作、PHP研究所、定価500円)という本を紹介します。前回の記事(悪口を言う家族から離れた方がいい理由)でも、この本から一部紹介しました。
どんな人のために?この本は、他者との関わりの中で、本当は自分の中にどこか違和感を感じているのに、他人に合わせてしまう人に特にオススメしたいです。
自分以外に一人として同じ人間がいない他人と関わる中で、自分の中に違和感を感じることなんて、正直当たり前ですね。自然なことです。違和感とまではいかなくても、単純に、「自分とは違うな」と思うことなんてしょっちゅうあると思います。
それを、「違うんだな」で済めばそれでいいのですが、変に他人に合わせようとしてしまったりするとどこかで問題が出てきます。しかも「合わせないではいられない」人もいます。自分では合わせたいと望んでいるわけでも、意識しているわけでもないのに、気付いたら、やっぱり合わせてしまっている、そしてふと振り返って、反省して、それでも、また合わせてしまう・・・こんな繰り返しの日々になっている人もいます。
他人 ...
【本の紹介】「君たちはどう生きるか」ー自己中心のデメリット
昨年、「漫画 君たちはどう生きるか」(吉野源三郎氏原作、羽賀翔一氏漫画)の累計発行部数が200万部を突破しました。かなりのメガヒットで、書店のコーナにも、ランキング1位!などと大々的に紹介されていました。
私は、漫画版ではなくて、2017年8月に出た、新装版小説(「君たちはどう生きるか」 吉野源三郎著 マガジンハウス出版)の方を読みました。ページ数は、318ページあり、それなりのボリュームはあります。小説形式になっていますが、どの章にもテーマが明確にあってわかりやすく、面白かったです。
読みやすく、人がどう生きるかについて、かなり深いところまで投げかけてくるので、自分の頭の中で考えることができます。
君たちはどう生きるかの目次各章のタイトル(目次)は下記のような感じです。
一、へんな経験
ものの見方について(おじさんのノート)
二、勇ましき友
真実の経験について(おじさんのノート)
三、ニュートンの林檎と粉ミルク
人間の結びつきについて(おじさんのノー ...