苦しんでいる家族にやってはいけない助け

気持ちとの向き合い方

苦しんでいる家族が目の前にいます。あなたは、その家族の力になりたいと思っています。抱えている問題は、遥かに大きく、不安や心配になります。

そんな時に、ついやってしまいたくなるけれど、やってはいけない行動があります。

家族にやってはいけない行動

引きこもりの息子に、求人票を渡す
依存症の妻に、AAのパンフレットを渡す
うつで辛そうな娘に、カウンセラーを紹介する
会話をしてくれない夫に、言いたいことを手紙で書く

・・・

などなど。

たとえば、【引きこもりの息子に、求人票を渡す】という例。

確認事項はシンプルです。息子から「何か、求人を探しておいてくれない?」と言われているかどうかです。もし直接に頼まれているのであれば、全く問題ありません。

でも、自分が不安を感じて、心配になってしまって、何とかしようと、「息子が仕事を探しているから。」「少しでも力になりたいから。」「いい求人だったから。」という自分が感じた理由で行動を起こしている場合、のちのち人間関係の問題につながる可能性が高くなります。

意図しないメッセージを受けとる危険性

その理由は、人の行動は、メッセージを伝えるからです。そして、メッセージは、言葉以外でも伝わります。

たとえば、無視。これもメッセージです。どういうメッセージかというと、「あなたとは話したくない」というメッセージです。よく相談者の方で、「私が何を話しても、夫は反応してくれないんです・・・」という方がいます。この場合、「あなたには反応しない」というのがメッセージです。

不安や心配から、家族のことを構おうとする時、最初の例に戻ると、「求人票を渡し、息子に職探しをしてもらい、仕事を得てもらうこと」で自分の不安や心配を取り除こうとしている可能性があります。もちろん、「息子がそれを望んでいるから、善意でやった」という気持ちを主張したくなるかもしれません。

注目したいのが、「自分がどう感じるか」ではなくて、「相手がどう受け取るか」ということです。

どれだけ、他人を想っての行動であったとしても、息子さんから見ると、「助けになりたい」という純粋なメッセージではなく、「あなたは仕事がなくて問題だ」というメッセージを勝手に受け取ることができるのです。

依存症の例も同じです。「私はあなたが健康になってほしい」という純粋な動機から行動したにも関わらず、相手からは、「もう自分では治せない悲惨な状況です。」というメッセージで受け取られることがあります。

そして、「こころ」に葛藤を感じながら、苦しんでいる家族は、受け取るメッセージによって、更に自らを追い詰め、不安や心配を増幅させてしまうこともあるのです。周りの人が良かれと思ってしたサポートは、サポートどころか、人を更に苦しめる害にすらなってしまうこともあるのです。

その行動は対自分か対相手か

では、どうすればいいのでしょうか。家族問題を抱えている場合、不安や心配はつきものです。

家族関係の中で、不安や心配がきっかけで行動に起こしたことが問題につながりやすいのは、その行動に伴う結果が対自分ではなく、対相手になっているからです。

不安や心配になった時、通常、自分のことであればすぐに自分で行動できます。たとえば、目の調子がどうもおかしい、このままだと目が見えなくなってしまうのではないかと思い不安になったとします。自分に関わることであれば、その人は眼科に行くなりして、不安を取り除こうと行動し始めます。

自分に関わることであれば、これでいいのです。自分が好きなように行動して、その結果も自分で受けます。

でも、もし、行動の結果が相手に関わることになった場合は、すぐに行動をしようとせず、一度立ち止まって冷静に考えるワンクッションは、実はかなり大切です。

行動の結果が相手に関わることであれば、誤解を受けないように、しっかり話し合いをしたり、オープンな聞き方をしてまずは「何か手伝えることはあるか?」と聞いてみましょう。

そして、「ない」と答えられたら、自分がどう考えても、「いや、助けが必要でしょう。」と思っても、「今はない。」と引き下がることです。

「いや、ない」と言っているだけで本当はあると思うかもしれません。そして、実際は本当にあるかもしれません。そうであれば、本当はあるのに、家族にすら「ない」と言われてしまう信頼関係の部分を見直していく必要があります。

不安や心配になると、人は解決に急ぎます。でも、相手のこととなると、相手には相手のタイミングがあります。この相手のタイミングが自分とずれているのに、自分のタイミングでことを進めようとすると問題が生じるのです。

家族を助けようとして苦しみ、助けられなくて苦しむ人がいます。でも、家族問題では特に、「助けをしない助け」も存在するということを知っておいてください。