『お酒の失敗じゃない。あなたの失敗です』のポスターより

2021/11/05勇気と挑戦, 気持ちとの向き合い方

駅のポスターを見て

たまたま駅でこのポスターを見かけました。以前も見たことがあって、その時はチラッと見て素通りしましたが、今回はちょっと心に引っかかりました。

このポスターのメッセージの発信先は、お酒の問題を抱えている人たちでしょう。飲酒によって鉄道係員に対して、問題を起こす人たちに対して警告する内容になっています。

恐らく、こういう問題が起きた時、多くの人が「お酒のせいでこうなった」みたいなことを言っているから、このポスターにある文言が出てきたのかもしれません。もしくは、「酒さえ飲まなければ」とかそんな不満を暴行をしてしまう人が持っているように感じるのかもしれません。

お酒を飲まないと生きていけられない人たち

でも、言っている本人は、「お酒を飲まなければ・・・」などの次元の話ではないことは十分わかっています。お酒の問題は、様々なものがありますが、問題なのは、お酒を飲まないとやっていけないぐらいの気持ちになっているということです。

酒でも飲んで、現実を忘れないとやっていけないような気持ちになっていることが問題で、その症状として、心のSOSが、お酒に出てしまっているのです。

友達と、ワイワイ楽しくお酒を飲むではなくて、お酒で問題まで起こしてしまうほどの飲み方をしている人は、必ずと言っていいほど心が疲れきっています。

それはもちろん、疲れることがあるからお酒に頼るし、お酒に頼っているから、お酒に頼らないではいられなくなるし・・・と悪循環に陥ってしまうんです。

心の疲れは、自分の感じる自責の念であったり、怒りであったり、疑いや恐れであったりします。それは人様々です。そういうきっかけによって、お酒に逃げてしまい、そしてお酒に依存して、トラブルを起こしているこのループにもまた不満が出ているのです。

だから、心の中では、本人は「自分がやってしまった!」ということを百も承知です。本人は本人で、他人が想像する以上に痛いほど分かっているのがほとんどです。

そんな状況の中で、果たして、「お酒の失敗じゃない。あなたの失敗です。」という文言を、お酒の問題を抱えている人が見たところで、どう感じるでしょうか。恐らく、残念ながら更に責め立てられているような気持ちになるだけです。

お酒の問題を抱えている人と関わっている家族や友人は、「そうなんだよ、本人のせいなんだよ。」と思って、もしかしたら、ますます責め立てるかもしれません。もしくは、完全に見放すかもしれません。

本来、世の中をよくしていこう!と思って、こういうポスターを使って問題提起をしたり、警告したりするのに、責められる気持ちになったり、責める気持ちを高めるような文言を使っても、暗い世の中が更に暗くなるだけです。

堕落していく人間は、更に堕落させるような、そんな突き放すような行為をし続ければ、本当にひどい状況にある人はさらに闇に突き進みます。

責められていい気持ちになる人はいないし、人を責めながら笑顔になっている人はいません。責めるというのは怒りなんです。自分を責めようが、他人を責めようが、「怒りの力」であることには変わりありません。

暴力も怒りが原因なんです。暴力をしているのに、怒っていない人はいません。暴力をする人は、例外なく、恐ろしい顔をしています。それだけ怒りを持っている人たちなんです。

そういう人に対して、更に責めて、怒りを増幅させるようなことをしても、意味がないどころか、問題を悪化させます。正直、あのポスターは何のためにあるのでしょう。鉄道会社側の「被害アピール」と何かしらのキャンペーンを公に対して実施しているという満足感以外は、あまり意味がないでしょう。

本当にその問題を起こす人や、それらと関わった人に対して、何かを啓発しようとしているのなら、貼らない方がいいくらいで、ただのこの世の暗闇のアピールにさえ見えてきます。

誰でも責められることは不快

よく、公共のお手洗いで「トイレをきれいに使ってくれてありがとうございます。」などの文言が書かれているのを目にします。

もしそれが、「絶対にトイレを汚さないでください!」などと書かれていたら、あまり心地よいものではありません。なぜならこの場合は、なんだか責められているような気がするからです。

責められて気持ちが良くなる人はいません。人を不機嫌にする力を持っているのがむしろ責めることの結果です。そう思えば、責めることは、より問題を起こしてしまうリスクにさえなるのです。

責められたから改善するなんてことはありえません。頭ごなしに人を叱ったり、これでもかという痛い目に合わせることでわかってもらおうなどと平気で思っている人もいますが、人の気持ちはそんなことで心改めるものではありません。ある意味では他人がそんな簡単に他人を操れるほど、人の心は単純じゃないのです。

責めればむしろ、恨みと、許せない憎悪だけが残り、そういう思いがまた他の誰かに影響してしまうのです。

お酒の問題は確かに大きな問題です。それによって、悲惨な目にあった方も少なくないと思います。でも、どんなことがあっても、お酒の問題を起こした人を責めたところで何にもならないんだということを覚えておきたいものです。

怒り

Posted by kokoronoeiyo