境界線を持つことによる3つのリスク
境界線というのは、どこまでが自分の責任で、どこまでが他人の責任なのかという”目に見えない線引き”です。この境界線が不明確になっている結果、本来入るべきではない他人の領域に踏み込んだり、本来入れるべきではない自分の領域に他人を招いたりすると人間関係の衝突が起きやすくなります。
とはいえ、境界線を持つということに、ネガティブなイメージや、何か違和感を感じていらっしゃる方もいるかとと思います。そもそも境界線を持つことにリスクはないのか?という恐れに向き合うために、境界線を持つリスクについて3つの視点から書いていきます。
目次
リスク1:仲間を失うのではないのか
境界線を持つということは、「No」と言うべきことに、「No」を言うことです。健全でない友人関係を拒否します。図々しい人であったり、相手の都合を全く考慮せず、押しかけてくる依頼に対しても、そのまま受け入れたりはしません。境界線を持ち始めることによって、今まで開けっ放しで、誰でも入り放題にしていた扉をしっかり管理し、時に厳重に施錠し始めます。
「No」ということで、友人や同僚は嫌な顔をしたり、怒り出すかもしれません。
今まで、仲がいいと思っていた友達が、実はあなたを「利用していた」場合は、この傾向は強くなります。相手は、あなたがNoと言うことで、「利用できなくなった」と判断すると、離れていってしまうかもしれません。確かに、状況によっては、友達を失うかもしれません。一方で、悪い関係がなくなれば、新しい良い関係を手にすることもあります。
今まで、人の分まで仕事を手伝ってあげていたのをやめれば、同僚は不満になり、文句を言ってくるかもしれません。一方で、実はあなたの善意とあなたの過労によって、同僚の能力のなさがカバーされていただけだったことが明らかになり、その結果、人事を見直すことに繋がったり、間違った評価や査定をしていたことに上司が気づいたり、もしくはそもそも人数と合わない業務量であった為、無駄な業務が減らすといった、改善に取り組むきっかけになるかもしれません。
境界線を持ち続けることは、問題を明らかにします。でも同時に、見えるゴミや垢は掃除をするのと同じで、問題に向き合うことへと導きます。
相手を怒らせるのではないか
今度は、友達や同僚よりも、もっと深刻で身近なパターンです。それは配偶者や親といった家族問題です。家族関係はそもそも境界線が曖昧になりがちです。やってもらう、やってあげるが当たり前になってしまっている関係があります。
あなたが境界線を持ち始めることで、長い年月、家族にとってはこれまで「当たり前」としていた「あなたからの援助」を受けられなくなるかもしれません。そのことで家族はあなたに不満を抱くかもしれません。あなたが境界線を持つことで起きる変化(家族にとっての不都合さ)に対して、家族が怒りで反応される可能性は十分にあります。
この怒りの所有者はあくまで相手です。
境界線は、相手に対して、どこまでが「私」であり、どこからは「私」でないのかを明確にするものであって、本来、自分を傷つけたり、相手を傷つけたりするものではありません。
相手を怒らせないことを目的に行動し続けることは、自分を他人に明け渡してしまっています。境界線を持つことは、自分を取り戻すことなのです。
怒る自分になってしまうのではないか
境界線が曖昧の時は、他人にコントロールされたり、支配されたり、操作されても、適切に怒ることができませんでした。
怒りは決して悪いものではありません。時に、怒りをもって対処しないといけない時もあります。
自分の感情を押し殺し、表に出さないと、どんどん他人に支配され続け、搾取され続け、侵され続け、操作され続ける関係になりかねません。その結果、行き着く先は、自分の人生のハンドルを他人に明け渡した世界です。
特にいい人に限って、「怒っちゃダメだ。」「声をあげてはダメだ。」などと自分を制して、本当に危険が迫っているにも関わらず、我慢をして、警告灯を照らすのを躊躇することがあります。
怒ることができないのは、いい人ではなく、自分が怒ることによる他人の反応に、恐れを持っている可能性もあります。たとえば、「他人が自分を嫌いになるのでは」、「他人が逆上して、余計嫌な気持ちになるのでは」、「他人が自分から離れていくのでは」と恐れているんです。恐れは自分の味方ではありません。恐れから怒ることを躊躇しているのなら、尚更、怒ることが必要な時かもしれません。
おススメした境界線の本には、このような記述がありますので、最後に引用したいと思います。
「他人に支配されたとき、怒りを感じてもいいと思っているだろうか。人に侵されているとき、私はそれに気づいているだろうか。私には初期の警告が聞こえているだろうか。」
もし答えが「はい」なら、あなたは正しい場所にいます。
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