【森田療法】ーあるがままの自分で

2021/11/05心理・思想・聖書

「~でなければならない」「~できない自分に不満を感じる・・・」こんな気持ちになったことはありますか。そういう人には森田療法の考え方が参考になるかもしれません。ということで、今回は、森田療法について紹介します。

森田療法とは何か?

森田療法は、日本版の精神療法の一つです。心理学というとフロイトやユングなど、海外の方が多いですが、森田療法は日本から出発して、海外でも知られています。

大学病院で精神科の医師をしていた森田正馬氏によって始められ、1920年頃に神経質者に対する「森田療法」が確立されました。

神経質者と聞くと、自分には関係ないのではないか?と思ってしまいがちですが、ここではもっと気軽に捉えて、何か自分の中で、「自分で悩みを作っているなー」とか、「その悩みを自分で大きくしてしまい、生き辛くなっているなー」と思えば、森田氏の考え方は有効です。

森田療法では、悩みや不安の原因を探して、それを取り除こうとはしません。むしろ、人生、悩みがあるのなんて当たり前、生きていく上では必須のものと理解し、その上での心のあり方を重視しているものです。

悩みの種になってしまう「こうあるべき」思考

今の社会は、職業選択も自由にできれば、誰と結婚するかなど、自分で自由に決めることができます。もちろん、ある程度の制限はありますが、とても可能性にあふれている社会です。

「自分が本当にやりたいことは何か」とか、「自分探し」だとか、一昔前は贅沢過ぎるような考え方もしたり、個人の価値観はすごく多様化しています。

そんな可能性に溢れているからこそ、努力をすれば何でもできるような気がしてしまいます。それでも、現実はなかなか思うようにいかず、結局、現実と理想の差に悩むことになってしまうのです。

よく考えれば、自分で理想を大きくして、自分でその理想に追いついていない自分をダメだと思って、落ち込んでしまっているのです。他でもない自分が自分を苦しめています。

理想と違うからこそ、「こうあるべきなのに・・・(そうでない)」と悩み苦しみ、そうやって苦しめば苦しむほど、ますます現実は面白くなくて、理想とかけ離れたものとなり、悩みの悪循環になってしまいます。

あるがままを受け入れる

森田療法では、「~したい」という欲望と、「~になったらどうしよう・・・」という恐怖は、いずれも人が操作することのできない自然現象だとしています。そして、こういった欲望と恐怖をあるがままに受け止めれば、心には自然治癒力が働くという考えを持っています。ここが大切なポイントです。

自分の心に感じたままの感情を批判することなく、感じる、受け入れてあげる、そうすることで、本来の生きる欲望が自然に発現してくるというものです。

人は、恐怖や不安、心配といった感情を持てば、こういう嫌な感情をすぐになくそうとしたり、満たされない思いを何かで補填しようとして、自分でコントロールしようとするところがあります。特に、可能性の中に生きている現代では、すべてコントロールできるはずだ、コントロールできない方が、人生に敗北しているなど、どこか自分に厳しすぎるところもあります。

そうやって、自分の力で、無理にコントロールして「こうあるべき」を目指そうと、いつまで経っても等身大の自分を受け入れられなかったり、「思いはあるけれど行動できない」などという葛藤が強まったり、今度はそういう現実に直面していることすらも受け入れられなくなって、逃避したりと、どんどん悩みが深くなってしまいます。

誤解を招きたくないのは、あるがままというのは、何も感情に流されて、ただ何となく日々を過ごすことでは決してありません。

感情というのは、自然現象と知り、受け入れた上で、感情は感情で自分のものとして引き受けながら、「日常の行動」または「自分がしようと思っている行動」を実践していくことが大切です。

そうやって、囚われた状態から解放され、行動していくうちに、感情もまた変化していくーこれこそが森田療法の「あるがまま」の姿です。

あるがままというのは、何でも肯定的に考えられるとか、気分は落ち込んでいても、それにも負けず自己実現をしていくとか、そういう強いイメージでは決してありません。むしろ、自分がいかに不完全で、弱くて、無力であり、限界があるのかをよく知り、受け入れている態度です。そうやって受け入れて初めて、今ここで、どうあるべきか、何をするべきか(できるのか)が見えてきます。

森田療法は、強い縛りを持っていた考え方を緩めさせ、自分の生き方を見直すきっかけにもなります。学べる本も沢山出ているので、興味のある方は、ぜひ森田療法のことをさらに知ってみてくださいね。

 

 

【参考文献】
・女性はなぜ生きづらいのかー森田療法で悩みや不安を解決する(2018年 白揚社)