【心理学】交流分析ーストローク

2021/11/05心理・思想・聖書

交流分析は、対人関係にトラブルを抱える人のパーソナリティ(個性、心理状態、考え方などなど)に着目し、他者とどのように関わっているのかを分析し、個人の成長を促し変化させていくことを助けます。今回は、交流分析を構成する要素の一つ「ストローク」について見ていきます。

ストロークとは何?

ストロークとは、他人の存在を認め、認めたことを表す「言動」のことです。
例えば、目の前に店員さんがいます。この定員さんの対応に満足して、つい笑顔になって「ありがとう」と言ったとします。この時、ストロークが発生しています。目の前にいる「店員さん」という人の存在を認め、それによって行動を起こしているからです。逆に、今度はこの店員さんに対してクレームをつけ、怒鳴ったとします。この時も、店員さんの存在があってこそ、怒鳴っているわけで、何も壁に対して怒っているわけではありません。この場合も、同じくストロークが発生しています。

上の例のようにストロークは、プラスストロークとマイナスストロークがあります。

プラスストローク マイナスストローク
身体の動作による表現 ・手をつなぐ、なでる、抱きしめる ・殴る、蹴る、叩く、ぶつかる、つねる
言葉による表現 ・励ます、褒める、慰める、感謝する  ・悪口を言う、けなす、罵倒する
非言語による表現 ・うなずく、ほほ笑む、見守る ・見下す、にらむ、軽蔑する

当然、人はマイナスストロークよりも、プラスストロークを欲しいと感じます。ただ、プラスであれ、マイナスであれ、ストロークというのは、「人の存在」を認めているから起きるものであり、どんな人でもストロークは生きていく上で必要不可欠なものです。

このストロークそのものが何も与えられない状態になると、たとえマイナスストロークであっても欲しくなり、悪循環に陥ってしまうことがあります。

夫に依存する妻、妻に依存する夫

家族関係の中で、夫が妻に罵倒する、妻が夫を罵るなどというのは、このマイナスストロークが働いています。人間関係をこじらせ、夫婦関係を破綻へと向かわせるものです。

その中には、繰り返し起こるマイナスストロークによって、どちらかが完全に拒否反応を示し、心を閉ざしてしまい、相手に無関心になることがあります。これは自己防衛の一種です。もうこれ以上、傷つきたくないという思いや、何かした(言った)ところでどうにもならないから(境界線を持つ)、罵倒されても、罵倒せず、罵られても罵り返さずという態度をとることがあります。

何かしらの問題を抱えている夫(妻)が、相手を罵倒するとき、妻の対応によっては、ますます罵倒がひどくなったり、場合によってはひどい暴力などにもつながりかねません。ストロークが人間にとって必要不可欠である以上、「怒っているのに相手が反応しない」という事実に、相手は耐えられず、どこまでもマイナスストロークがエスカレートしてしまう場合もあるのです。ただし、だからと言って、相手のマイナスストロークに応じ続けていれば、ますますマイナスストロークが日常的なものになってしまい、悪循環が繰り返されてしまいます。

豊かな交流を築くストローク

豊かな人間関係を作るためには、人との間に、「自分」をどこまでオープンにし、どこからはクローズにするのか、明確に持っておく必要があります。また、人間関係の中で、人が与えてくれたものを、素直に受け取り、自分が与えられるものを、惜しまず与えるということも大切です。

つまり、✔︎与える ✔︎謙遜しない ✔︎我慢しない ✔︎はっきり断る・・・これらのストロークは非常に大切で、豊かな人間関係を作るのに役立ちます。

与えるとは自分ができることはする、義務を果たす、人に親切をする、協力する、奉仕するなどなどです。これらが豊かな人間関係を作るのは、容易にイメージできると思います。

謙遜しないというのは、相手から言われたこと、褒められたこと、与えられたものを素直に受け取ることです。謙遜することは、相手が自分のためにしてくれたことを「受け取らない」ストロークでもあり、これらは拒絶の意味にもつながりかねず、豊かな人間関係を作る邪魔になってしまいます。

我慢しない、はっきり断るというのは、自分の境界線、限度をしっかり持つということです。他人の問題に首を突っ込むのをやめ、自分は自分の人生をしっかり歩むとき、変な気遣いや「自分はこんなにしてあげたのに。」などと相手を責めたり、後悔したりして起きる人間関係の衝突を避けることができます。