【相談事例】息子が引きこもりで困っている。早く働いて欲しい。
【相談内容】
息子がずっと引きこもりで、一体いつまでこういう生活が続くのだろうかと不安になる。息子は小さな頃の不平、不満を自分に言ってきて、よくよく考えると、かなり言い当てているこが多い。外出はしないが、飲んでいる薬のリサーチをしたり、薬を変更したいなどと自分から言ってくる。医者には必ず自分から行く。
以前、息子からある本を読んでくれと言われて、渡された本があり、内容は非常に暗い本で、息子はこんなことばかり考えているのだろうか・・・と思うと気持ちがまた下がってしまう。
過去のことを振り返ると、「たら・れば」の後悔がいっぱいわいてくる。年明けからお金を入れるようにと責めてしまった。引きこもりでも働ける求人をわざわざ見つけてあげて紹介したけれど、まともな仕事をしたいと言う。色々話したいけれど、息子はあまり話してこない。時間が経てば、経つほど、息子の就職も難しくなるだろうし、不安でいっぱいになる。(60代・女性)
目次
引きこもるには理由がある
今回の相談は、親子関係です。引きこもりというのは、自ら孤独を選択する行為なんですね。人は健全であれば、人間関係の中で、幸せを感じたり、喜びを感じたりします。人間関係は傷つくものでもありますが、同時に幸せを感じるのも人間関係からです。
そういう「人との関わり」を求めるのが、本来は人として自然であるのに、あえて「孤独」を選択するには「理由」があります。本人は何も好きで引きこもりをやっているわけではないのです。周りの家族は、何にもしないとか、甘えているとか、いい歳して・・・などなど色々な不満や葛藤があると思いますが、引きこもりの本人も、家族以上に大きな葛藤の渦の中にいます。
孤独を選ぶということは、シンプルに言えば、「不必要な人間関係を避けたい。」というサインです。これまでの歩みの中で、この「人間関係」によって、傷ついてきたからです。依存症の方にも多いですが、引きこもりになる方も、非常に敏感で、真面目で、感受性が豊かな人が多いです。人のちょっとした表情や言葉遣い、態度などを敏感に読み取ります。
そして、人との関係の中で、自分という存在が相手に「受け入れられない」ことを感じ取ったりします。これは心の感じ方の意味です。実際に相手がどうであるかはあまり関係ありません。今回のケースでも、幼少期に親に受け入れられなかった、理解してもらえなかったという気持ちが、今の不平・不満になって表れています。
こういう時に、「引きこもりの上に文句まで言われる。」とどこか、自分を被害者のように親が受け取ってしまうと、引きこもりの本人にとって「また親に受け入れられなかった」という結果だけが残ってしまいます。その結果、引きこもりはいつまで経っても改善されない・・・ということになってしまうのです。
息子さんから言われることは、「よくよく考えると、かなり言い当てていることが多い」と気付たことは、大きな一歩です。何となく分かっていても、人は認めたくないことは自己正当化したりして、なかなか認めることができません。せっかく気付けたのだから、それを「たら・れば」の後悔に留めず、「今まで息子の気持ちを受け入れてこなかった」という事実を素直に受け入れてあげます。
相手のタイミングに合わせてあげる
「息子が話してくれない」と嘆いていましたが、息子さんは「話さない」のではなく、「話せない」のですね。
実際、息子さんは、薬についてリサーチをしたり、自ら薬を変えたり、医者に行ったりと、本当に「治りたい!」という気持ちが強くあるんです。今は、「変わりたい!」と心から思っている息子さんを信じてあげることです。
息子さんのタイミングを待てずに、不安に押しつぶされて、下手に就職を促したり、いつになったらお金を入れてくれるのかと責めたり、お膳立てをすることは、息子さんの回復の阻害になりかねません。
先回りすることをやめ、息子さんのタイミングを待ち、息子さんの「変わりたい!」思いをそのまま信じることが、今できる最大の貢献です。もう過去と同じことは繰り返さず、息子さんのSOSを受け入れて、息子さんが少しずつでも良くなろう立ち上がる勇気を砕かないようにしましょう。
関心を外に向けること
心から、息子さんの回復を願っているからこそ、まさか目の前の家族がその回復の足を引っ張るなどということがないように、過去の「たら・れば」と感じた気づきを、自ら実践していけるよう、息子さんから自分に対して意識を向けることです。
今は、関心事が息子さんばかりに目がいっていますから、何かご自身で趣味などを見つけてみてください。自分が楽しいなと思うことをやり、まずは自分自身が幸せを感じられるように、関心を他に向けてみてください。いつまでも息子さんを見えない手でぎゅっと握りしめ続けるのをやめ、自分の手から離して、彼を一人の男性として、尊重してあげてください。引きこもっている息子さんにとって、目に見えない敬意は力になります。
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