アドラー心理学「嫌われる勇気」共同体感覚(9)

心が軽くなる考え方

今回は、アドラー心理学の中にある「共同体感覚」について取り上げます。

アドラーの言う「共同体感覚」とは何か?

共同体感覚とは、アドラー心理学の中でもとても大切な考え方です。

でも、同時にこれまでの課題の分離や、幸せになる為の変化を理解して実践しないと、単独ではなかなか理解し難く、頭では分かっても、実際に取り組むのはすごく難しく感じてしまいます。

アドラーは、悩みのほとんどは、対人関係といいましたが、対人関係の理想像、まさにゴールがこの共同体感覚です。

共同体感覚は、英語でsocial interestと言い、「社会への関心」という意味です。人は1人では社会を構成することが出来ず、2人以上、つまり「私とあなた」の存在で社会になります。

難しく考えずに、家族とか、会社とか、友人とか、そういう関係をイメージしてみて下さい。共同体感覚は、まさにこのような関係で、他者を完全に「仲間」と見なします。

例えば、家族連れがチケットを買おうとディズニーランドのチケット売り場で並んでいたとします。途中から、お父さんだけが並び始め、お母さんと子供たちは、列を外しました。

だからといって、お父さんが、自分の分だけのチケットを買うなんてことはありません。仲間意識があるから、家族全員分を用意するのです。

相手が敵ではなくて、仲間と思えば協力しようとしたり、貢献しようとするのは、自然なことです。また仲間となれば、あの人が自分をどう思うか、嫌われるんじゃないかという恐れもなくなってきます。

スポーツのチーム、家族、会社など、同じゴールに向かって進もうとする時、そこに仲間意識が生まれます。アドラーのいう共同体感覚は、この幅をもっと広げようとするイメージです。

自分が所属する場所に留まらず、地域へ、国へ、世界へとすべての人、すべての生き物、宇宙に至るまで、言葉通り、すべてを共同体としています。

「ありがとう」の連鎖を始める

私は、共同体感覚はもっとシンプルに、まずは「ありがとう」の連鎖を始めることと捉えたらいいと思います。つまり、人から「ありがとう」と言われることを沢山やり、助けてくれた人や役に立ってくれた人、親切な人、感謝なことに積極的に「ありがとう」と言うことです。

言葉に出すことで、人は「自分は貢献できたのだ」と知ることができ、お互いの存在を認め合うことができます。誠意のある正直な「ありがとう」はそれだけで価値の高いものです。

レジの人、ホテルのフロントの人、タクシーやバスの運転士さん、掃除をしてくれる人など、自分が利用できるように貢献してくれた人に、素直に「ありがとう」と言う。

この自然なことが自然に出来るようになると、仲間意識もどんどん高まってくるだけでなく、人として魅力も、自分自身の幸福感も高まっていきます。

仲間意識は自分の居場所を与えてくれます。周りが敵に囲まれていては、自分の居場所は見当たりません。仲間の中にいることで、人ははじめて安心を見出せるのです。

仲間意識を拡大させること

人は時にお金に力を持たせて、自分がお金を払う立場になった途端、横柄になったり、好き勝手なことをできる力を与えられたと錯覚してしまうことがあります。

レジの人、運転士、ウエイターの人をあたかもサービスを提供してくれる人間ロボットのように、お客の立場を利用して、何でもありのような態度をとるのは仲間意識として相応しくありません。

家族や友人、会社の組織や、スポーツでのチーム、また自分にお金を払ってくれるお客様に対して、仲間意識を持つことはそれ程難しくありません。仲間の成功が自分の成功にも直結する時、人は容易に仲間意識を持つことができます。

でも、通りすがりの人、その場限りの付き合いの人、また自分がお金を払う立場であるお店の人、ましてや、何らかの競争相手に対して、仲間意識を持つことは意識して、実践しようと思わなければ、始めは難しいかもしれません。

共同体感覚の範囲は、言葉通り「すべて」であり、かなり広範囲の仲間意識を意味しています。まずは、今持っている仲間意識を拡大していくことです。

仲間の範囲が広がれば広がるほど対人関係は、より豊かになります。より豊かな対人関係が広がれば広がるほど、より幸せを感じることができます。

相手が自分を仲間と思ってくれるかどうかは、ここではあまり関係ありません。

自分が相手を仲間と見なすこと、家族と同じように、尊い人であることを認めること。相手が仲間意識を持ってくれても、くれなくても、まずは自分が仲間意識を持って生きていく。そこから仲間意識の輪が広がっていくのです。

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