共依存の家族問題にアドラー心理学を推奨する理由

心が軽くなる考え方

今回は、アドラー心理学について取り上げます。

私は、カウンセリング手法として、特定の心理療法をサポートしているわけではありませんが、家族問題については、アドラーの考え方をおすすめしています。今回は、その理由について書いていきます。

1、課題に分離について扱っているから

家族問題というのは、多くの場合、「あまりにも密接した」関係の中で生じてしまいます。友人関係や仕事の悩みとは少し種類が違って、お互いが、いい意味でも悪い意味でも「あまりにも親密」になりすぎた為に起きてしまった問題が多いです。

「親密さ」は家族関係には確かに必要なものであるけれど、同時にこの「親密さ」ゆえに、本来は相手の領域であるにも関わらず、土足でずたずた入り込んでしまうようなことがあります。相手の問題であることも自分の問題かのようにして、次第に癒着し始め、大きな問題につながってしまうのです。

家族問題のテーマのカウンセリングは、様々なものがあります。親からひどい悪口を言われた、配偶者の浮気、離婚、依存症、DV、うつ、引きこもり、ギャンブルなど様々です。ただ、課題は様々であっても、共通しているのは、実は「相手をどうにかしたい」という「自己中心的」な思いの葛藤であったり、被害者意識であったり、自責の念であったりします。

家族という関係性の中で、どこまでが自分が責任を負うべき課題で、どこからは、手を引かないといけないのか(手を引いていいか)、その境界線が曖昧になって、見えてなくなってしまっているのです。そして、そのせいで、既にある問題を益々大きくしてしまっていることもあります。

アドラー心理学のスタンスは、「他人の課題は切り捨てよ。」です。そうすることで、複雑に絡んだ癒着関係を整理し、自分は自分がするべきことに取り組み始めます。

そうすると次第に、人間関係が整理されていき、家族の問題に対しても、もっと離れた位置から客観的に、冷静に見れるようになるからです。

課題の分離をするためには、何が「他人の課題」で、何が「自分の課題」なんかを明確に知る必要があります。そして、これがしっかり分離できて、自分は自分の課題に留まり始めた時、他人に振り回されて苦しんでいた日常から少しずつ離脱していくことができるようになるのです。

共依存の問題や、家族問題には、問題そのものを取り扱う前に、関係性の整理がまずは重要な観点から、アドラー心理学の「課題の分離」の考え方が適用でき、役に立ちます。

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2、共同体感覚の考えがあるから

アドラー心理学の考え方にある課題の分離をしても、結局、この共同体感覚がなかったら、「問題のある家族を切り離して、はい、終わり」ということにもなりかねません。

アドラー心理学の共同体感覚は他者を「敵」と見なすのではなく、「仲間」と見なします。この共同体感覚があるからこそ、課題を分離して、自分の課題に取り組むということに留まらず、自分は共同体の中で、周り(他者)にどんな貢献ができるのかという視点を持つことができるのです。

問題を抱えている家族を前に、ありのまま、そのままの状態で「愛する」ということは、簡単ではありません。

でも、だからと言って、自分の幸せばかりを追い求めたところで、人は幸せにはなれないのです。人はそういう風に作られていないんですね。

共同体感覚は、自己への執着を他人への関心に切り替えていきます。問題のある家族に対して、「自分の理想通りの相手」になってもらうことから、「相手の問題(責任)は相手に任せて、自分は共同体の中で何ができるのか」という視点に切り替えていきます。

こういう態度は、問題のある家族(他者)の成長や回復を助け、さらに自分自身の人生をより良いものにする助けになってくれるのです。

3、他のメジャーな心理学よりも「問題解消」することにストレートにつながるから

心理学や心理療法は様々なものがありますが、こと家族問題の、しかも「共依存」状態になって苦しんでいる関係に対しては、他の心理療法よりも、アドラーのメッセージがとてもストレートで、問題解消に直結しやすいです。というのも、家族問題は「人間関係の問題」でもあり、自分個人だけで完結する話では決してないからです。

心理学で有名な人といえば、フロイトやユングなどがいます。フロイトは、人間の心は「意識」「前意識」「無意識」の3層から成り立っていることを体系化しました。人の行動一つとっても、そこには無意識レベルでの「欲求」があり、この無意識の中にある隠された欲求を意識化することの重要性を唱えたのです。

家族問題でも結局は、「無意識」の中で、「人をコントロールしたい」「思い通りにしたい」とか、自分が気付いていなかった考えに支配されて行動をとった結果問題を起こしているということは沢山あります。そういう無意識に気づくことは大切です。

ただその無意識の考えを顕在化しても、自分のことはさらによく知れたけれど、実践レベルで家族とどう過ごせばいいのかとなると、また別の課題を乗り越えていく必要があります。

自分の問題点や、至らない点をクリアにすることには助けになりますが、ストレートに家族の向き合い方を見直すという点では、よりアドラーの方が具体的で、人間関係における実践の心理学である特徴があります。

ちなみにユングも人間の深層心理を研究し、人をタイプ別にカテゴリー化するという偉大な功績を残しました。自分がどんなタイプの人間を知ることは、自分を客観的に見るということで、適性や適職を探すときなどにも役立ちますね。

ただ、同じくこの考えも、家族問題を解消していくという点から見ると、自分を知って次に「何」をしていかなくてはいけないのかという、この「何」の部分では、また壁があります。そこで、アドラーの心理学の「課題の分離」や「共同体感覚」は人間関係における自分の立場について、明確にしているので、より分かりやすく実践しやすい心理学です。

【これまでのアドラー心理学シリーズ】

・自分が「自己中」に感じる時は
   アドラー心理学「嫌われる勇気」自己中心性(10)

・他人が敵に感じて競争意識がある時は
アドラー心理学「嫌われる勇気」共同体感覚(9)

・気持ちがついてこない時は
 アドラー心理学「嫌われる勇気」全体論(8)

・周りの人が自分を不幸にする時は
アドラー心理学「嫌われる勇気」課題の分離1(7)
アドラー心理学「嫌われる勇気」課題の分離2(7)
・認められたくて仕方のない時は
アドラー心理学「嫌われる勇気」承認欲求(6)

・どうせ〜できないと感じる時は
アドラー心理学「嫌われる勇気」劣等感(5)

・傷つきたくないと思っている時は
アドラー心理学「嫌われる勇気」自分が嫌い(4)
・変わりたいな、でもと思う時は
アドラー心理学「嫌われる勇気」変化(3)
・わかっているけれどできない時は
アドラー心理学「嫌われる勇気」選択(2)
・誰かのせいでイライラしている時は
アドラー心理学「嫌われる勇気」目的論(1)

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