過去を思い出して苦しい時〜原因と脱出法

シンプルに考える

ふとした時に、過去のことが蘇ってくる。

特に辛いことがあった時、悲しいことがあった時、目の前の現実に満足できない時。過去のことを考えてしまう。

過去の延長線上に今があると思い、「あの時、ああしたのがよくなかった。こうしたのがダメだった。」と自分の過ちを探そうとする。

考えすぎると、過去はどこまでも遡ります。今50歳の男性でも、3歳ごろまで戻ってしまうこともあります。そうすると、−47年。でも脳の中では一瞬でワープしてしまうんです。

考えても仕方ないのに、と頭では分かっているのに、過去のことを考えてしまう。過去のことを考えて、辛くなるという時に、どうすればいいのかについて紹介します。

過去を責める自分を責めないこと

まず、過去のことを考えてしまう自分を責めないことです。過去について色々な名言があります。「過去は過去。」「過去は変えられない。」「変えられるのは未来。」

そのように教えられてきたし、今と未来を生きようと思えば思うほど、「過去は過去。」「過去は変えられない。」なんてことを呪文のように頭の中で繰り返してしまうんです。

このように、「過去は変えられないんだ!!」って心の中で叫ぶ時、何を考えていると思いますか?

そう、めちゃくちゃ過去のことを考えているんです。
「あの時のあの選択が間違っていた。いやでも、過去は変えられないんだ。あの時はあれでベストだったんだ!」と。

そうやって、「過去は過去なんだ」って考えれば考えるほど、過去に囚われてしまいます。

だから、まずは過去のことを考えてしまう自分を責めないこと。

いいんです。過去のことを思い出したって。過去のことを思い出すことは自然なこと。
それは正常な反応なのです。

うまくいかなかった過去によって学習する

過去に縛られるのは辛いです。それなのに、なぜ、過去のことを思い出してしまうのでしょうか?

まず、過去のことを全く思い出さない人間なんていません。そして、過去のことを全く思い出さないのであれば、人は学習しません。そして、学習しなければ、成長もしません。

私たち人間は、赤ちゃんの頃から絶えず学習しています。

やかんがあるとします。沸騰して、そそぎ口から湯気が出ています。「あっ、湯気が出ている時に触るとやけどするな。」と分かるのは、過去に一度、熱い思いをしたからです。もしくは、湯気が出ていると熱いんだよと以前に、誰かから教えてもらったからです。

つまり、学習能力を高めるためには、過去を活かすしかありません。
過去にこんな失敗をした、次は改善しようと考えます。でも、過去の失敗や学びがなければ、何を変えれば良いのか判断基準もありません。

「失敗は成功のもと」とかそういう話ではありません。過去から学び、今の行動を変えていきます。過去は、今に対して、いい意味でも悪い意味でもなく、影響を与えているんです。

もう一度やかんの例に戻ります。過去、湯気の出ているやかんを触ると、熱い!という経験をしました。

だから、今度は、厚手の手袋をして、持ち上げるなり、熱さ対策を考えます。そうすると、過去から学び、「熱さ」を避けられるのです。そのあと、手袋をしたせいで、うまく持てずに結局、やかんを落としてしうかもしれません。でも、これは未学習のことだから、仕方ありません。次の学習は、「あー手袋の使い方、わかってないな。」と思うかもしれないし、「手袋なんてせずに、少し冷めるまで待とう」となるかもしれません。

これが学習サイクルのプロセスです。

では、過去を思い出して苦しんでしまうのは、どうしてでしょうか。

過去のことを思い出して辛い人はこんな状況です。
過去に、触ってしまった時の火傷のあとが、白くうっすら残っています。もう、ほとんど消えているのですが、よく見ると、うっすら残っているんです。

そして、こう思います。「あーこの傷さえなければ。」と考えるのです。状況をよくイメージしてみてください。目の前ではお湯が沸騰しています。家族はお茶が出来上がるのを待っています。もしくは、炒めた野菜にお湯を注いでクリームスープになるのを待っているかもしれません。

でも、あなたは周りのことなど考えられなくなってしまったんです。なぜなら、あなたが見ているのは、目の前の、過去に負った火傷のあとです。

こういう時、時間が止まってしまいます。物理的には止まりません。秒針はいつも動いています。

でも、傷を見続けている間、傷のことで頭がいっぱいになり始めます。今を見ないから、心は過去に執着しはじめるんです。

次第にお湯は冷めるかもしれません。家族は食事が待ちきれずに、レストランに行くかもしれません。せっかくの夕食も台無しにして、あなたは益々惨めになります。そして、また思うのです。

「この傷さえなければ!!!」

過去のことを考えながら生活している間に、今起きてしまった問題も、「過去のせいでこうなってしまった」と考え始めます。こうなると、連鎖が始まります。

頭の中で「過去の過ち」は何十倍にも膨れ上がってしまいます。

どこかの時点でこのループから抜け出さなければ、過去によって苦しい思いをいつまでも引きずります。

自分の不完全さを受け入れる

では、こういう状況から抜け出すにはどうればいいのでしょうか?

それは、不完全さの受け入れです。

【全員不完全】家族の平和作りは不完全さを認めること

過去に対して苦しんでいる時、頭の中でどんな作業をしていると思いますか?
それは、過去がこうでなければ、問題がなかったという、架空の「完璧」なシナリオが頭の中に作っています。

あの時、あの学校に言っていたら、あの就職を断っていたら、もっと「ただ好き」という理由で選んでいれば…色々なことを考えているんです。過去と和解していない人は、いつまでもこの作業を頭の中で続けます。そして夢にまで見ることもあります。

そして、自分の中の架空のシナリオが実現していれば、「もっと幸せだっただろう。」とか、「もっとうまくいっていただろう。」と結論付けます。

過去の自分に、今の自分が、上から目線になって、「あなたは、こうしていれば問題なかったのよ!」と自分に言い聞かせているのです。少なくとも、「今」の私は、過去の自分が、過去での自分でなければ、満足していたよ!と言い聞かせています。やっていることは、過去の自分の人格否定です。

すごく自分を傷つける作業を延々とやり続けます。自分が自分を受け入れないんです。自分という2人の人間が頭の中で戦い始めてしまうんです。

ここで考えたいことが2つあります。
1つ目はシンプルです。それは、果たして、「今」思う「過去」こうしていればよかった!は、本当にそうなのか?ということです。

答えは、「そうかどうか、わからない」が正解です。

選んでいない方の人生はただの想像でしかありません。

想像を絶対視していることに問題があります。選んでいない方の人生は存在すらしていません。

想像は、どうな風にでもシナリオを描けます。今の自分の都合に合わせて、どんな風にでも脚本を書き換えられるんです。「今」の自分は上から目線になって「過去」の自分に、完璧なシナリオを突き付けようとしています。でも、事実は、所詮想像です。

本当に「こうしておけばよかったの」選択が間違いがなく、良かったと言える根拠はあるでしょうか。

答えは、やはり「わからない」です。


わからないことに、無理やり自分で答えようとすると、頭の中で2人の人間が再び戦い始めてしまいます。

今のあなたは信じられないほどに成長している

2つ目は、1つ目よりももっと大切なことです。
それは、あなたの「今」がどうであれ、もし本当に「過去」こうしていればよかった、ああすればよかったと思い、そのことに気づいているのなら、あなたはそれだけ成長しているということです。

やかんの例に戻ります。あの時もし冷めるまで待っていたら、あの時もし慌てていなかったら、あの時もし手袋をしていたらやけどをしなかったのに・・・と思える今のあなたは、「過去」のあなたよりも成長しています。あなたが信じられないほどに成長しています。

過去には、そのことすらわかりませんでした。過去は過去で無我夢中で一生懸命、日々を過ごしてきました。過去は過去で、その時その時でベストと思う選択をしてきました。

でも、振り返って今、「ここはこうしたら良かったよ」とわかる自分がいるんです。

不幸になる人は、「そんなことにも気づけなかった自分はバカだ」と考えます。
幸せになる人は、「今はそんなことが気づけるようになってよかった」と考えます。

過去、実際に経験し、その結果も自分で経験したからこそ、今、「こうした方がいい」とわかる自分がいるんです。成長しているんです。過去を振り返って、ああすればよかったと思えるほどに、自分のことを知り、学んでいるんです。

それなのに、過去を「今」自分が思う「ベスト」と思う選択をしてこなかった自分を責めることは、成長過程などすべてぶっ飛ばして、

生まれた時から、完全な状態で生まれてこい!そして、今の私が考えていることが完璧だ

と言っているようなものです。

おそらく、10年後のあなたは、今の自分からの成長に気づくでしょう。20年後あなたは、10年後の自分の成長に気づくでしょう。

過去を振りかえって、ああだこうだ思えることこそ、自分が人生をかけて成長してきた証です。

そして、未来の自分も、今の自分を見て、コメントすることがあるでしょう。なぜなら、未来の自分もまた成長するからです。

なので、過去のあの選択をしていたらと責めないでください。

もし、もう一度過去に戻っても、「今」のあなただから、その新しい決断ができるのであって、「過去」のあなたは、やはりまだ未学習の部分が多いので、やはり「過去」にしたことと同じ選択をしてしまいます。それに、「過去」のあなたは、その当時の過去の経験値に基づいてベストな選択をしていたに過ぎません。その自分を受け入れてあげてください。

完璧は現実には存在しません。架空のストーリーは頭の中ではいかようにも作り出せます。でも、私たちは現実を丁寧に生きていくことしか、今はできません。人は転びながら、時に傷つきながら学んでいきます。

でも、今、過去を悔やんでいるあなたは、確実に成長しています。
今、過去のことを思い出して、それに囚われている自分をどうにかしようともがいているあなたは確実に成長しています。今日の1日を、丁寧に生きるなら、その歩みの中で、景色は徐々に変わっていきます。

今に集中する生き方を始めると、次第に自分の過去のことなんてどうでもよくなります。
そして、過去に感謝できるくらいにまで幸せになれるのです。

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