「親の介護は子どもの義務?」― 親子関係に適切な境界線を引く

人間関係と境界線

今回は「親の介護と境界線」について取り上げたいと思います。

まず最初にお伝えしたいこと。それは、

子どもには、親を介護する義務はないということです。

より正確に言えば、「義務感から介護を始めないでほしい」
ということを伝えたいです。

その理由を3つの視点からお話しします。

➀ 介護はプロの世界

介護は専門職の領域です。

病気になったら医者にかかるように、
介護が必要になったら専門機関や福祉サービスを頼る。
これが健全な境界線です。

親に悪性腫瘍が見つかったからといって、
子どもが責任を感じて自分で手術をするなんてありえませんよね。


同じように、介護が必要になったからといって、
「子どもがすべて担う」のは無理が生じます。

それでも現実には、

  • 「身の回りのことなら助けられるのでは?」(できそう)

  • 「子どもだから親の面倒を見るのが当たり前では?」(やるべき)

こうした思いが境界線を引くのを難しくさせます。

境界線を持つとは、この「できそう」と「やるべき」に対して、
自分がどこまで関われる人間なのかをはっきりさせることです。

➁ 結婚しているなら、第一優先は配偶者と子ども

もしあなたが結婚して、家庭を持っているなら、
優先すべきは実家ではなく、配偶者と子どもです。

「できる範囲で親を助けたい」という気持ちは素晴らしいですが、
親の介護に手いっぱいになり、
大事な家族を観察できなくなることは大きな危険信号です。

  • 親のことに気を取られ、子どもの深刻な問題に気づかなかった。

  • 親の世話で疲れ、夫婦間の孤立に気づかなかった。

これはすべて「赤信号」です。

両立・バランスという言葉は簡単ですが、
本当に大切な人を優先できているか。そのための境界線を引けているか。


ここを問い直す必要があります。

➂ 手放すことで生まれるメリット

最後は、別の視点から。

子供が介護を担うことが、本当に親にとってメリットになるのかということです。

あなたには家庭や仕事があり、時間も体力も限られています。

その中で「子どもだから」と主導することが、
必ずしも親にとって最良とは限りません。

たとえ親が「子どもに世話してほしい」と望んでも、
それを理由に子どもがすべて引き受ける必要はありません。


親自身も介護に突入する人生ステージは当然、初めての経験で、
不安から「身近な人に任せたい」と思うのは自然なことです。

しかし、本当に長期的に見て親にとって良いのは、
親本人の感情や希望がすべて正解なわけではありません。

適切な専門家に関わってもらう方がずっと効果的なことだって
多々あります。

だからこそ、子供の立場である自分の限界を認めて、
「できないことを手放す」ことは、結果的に親のメリットになることが多いのです。

~~~

今回は、

  • 介護はプロの世界であること

  • 家族の第一優先は配偶者と子どもであること

  • 手放すことが親のメリットになること

の3つの視点から取り上げました。
境界線を引くことは、決して「冷たい拒絶」ではありません。

むしろ、本当の意味で相手を尊重し、大切な人たちを守ることにつながります。

メッセージおよび質問やコメントはこちらから→
こころの往復便

境界線

Posted by kokoronoeiyo