【相談事例】妻からモラハラだと言われた
【相談内容】
妻から、モラハラだと言われた。改善せねばと思うのですが、なかなか改善できない状態で困っています。(30代 男性)
今回のケースは、妻が夫からの精神的なストレスを負担に感じ、挙句に妻が病気になってしまい、どうすればいいのかと困っている夫からの相談です。
まず念のため、モラハラとは、モラルハラスメントの略で、精神的な暴力や嫌がらせのことを指します。殴る、蹴る、叩くなどといった身体的な暴力にたいし、目で見えにくい言葉遣いや、態度によって相手を傷つける行為です。
この相談者は、妻から「モラハラを受けている」と言われた事実を受け止め、なんとかしなくてはならないと感じています。ただ、「感じてはいる」けれど、なかなか改善できないという状況に陥っています。
私たちの普段の生活の中でも、このようなことは別に夫婦関係や人間関係のトラブルでなくても、よくあることです。問題を認識はしたけれど、問題解決ができないというジレンマです。
夫がこの状況と向き合う過程で、自分の態度をそんな風に受け止める妻とは関わりたくないと、離婚に進もうとする人もいるでしょう。それも一つです。この相談者のように、妻との結婚を大切にしたく、なんとか自分が改善して、元に戻る努力をしようとする。それも一つです。
結局自分が決めているということ、「妻が(自分が今からとろうとしている行動を)させたわけではない」という視点は後々とても大切になってきます。
人は、「あなたには問題がある」「あなたによって傷つけられた」となった場合、少なからず自己防衛が働きます。
その結果、時に、心の底から申し訳なかったと思いつつも、時間が経つにつれ、「そこまで言われるほどのことをしたのかな」「そこまで私は悪いのか」と自分をかばい、自分の非を軽くしようともするんです。
自己防衛は人間に大切なもので、逆にこのバランスがとれていないと、極端に自責の念が深刻化したり、自己軽視したり、自分をひどく憎んだりと別の問題が起きてきます。
ただ、同時に、自己防衛が大きすぎると、問題と向き合うことができず、いつまでもその問題の中に留まり、同じ過ちを繰り返してしまいます。
大切なのは、自分がどう感じているのかということ、自分の本心を明らかにし、向き合うことです。
このケースの場合、「改善せねばと思っている」とありますが、本当に本人は「改善しなくては」と思っているのでしょうか。
妻が病気になった、結婚生活が難しくなったという、「結果」に起因して、「こんなに問題になってしまったの『だから』、自分は改善しなくてはならない」と思っているだけなのではないでしょうか。
「妻を病気にまでしてしまうほどの精神的負荷を与えた言葉、態度は一体どのようなものだったのか」を見ることなく(見たとしてもそこを重要視することなく)、起きてしまった「結果」だけを見て、頭だけを動かして、問題を解決をしようとしても、気持ちがついてきません。
その場合、このように「改善しようと思っても、なかなかできない」ことが起きるのはいたって自然です。仮に、表明的には、改善に進めたとしても、そんな土台のない改善では、またすぐに同じトラブルにつながります。
今回ケースでは、「本当に自分は改善したいと思っているのか。」「どこか自分は納得していないのではないだろうか。」「自分は何を納得していないのか。」「改善したい一番の理由は何なのか。」・・・これらのことを、自分の気持ちと向き合っていくことです。
「改善しなくてはいけない・・・」この言葉からは、とてもいい人間が伺えます。そして真面目です。誠実です。成長意欲もあります。でも残念ながら、自分の「いい部分ありき」で物事を解決しようとしても、問題の解決はできないんです。本当に問題がないなら、問題は起きないんですから。
今回のケースの場合でも、話を進めていく中で、実は、自分が言った言葉や態度が、「妻にそこまで言われるほどのものじゃない。」と思っていたことが浮かび上がってきました。本当のところは、自分には問題がないと思っていたわけです。(これは、カウンセリングを通じて、出てきた認識だったので、最初は本人も認めるのに苦労していました。でも、最初はそれでいいんです。誰にも責められるわけではなく、本当によくしていくためにはどうすればいいのか?と真剣に悩んで、良くしようとしているわけですから。)
自分には問題がないと思っていた人間が改善しようとしても、改善できるはずがありません。
もし、本当に改善をして、妻と良い関係を望むなら、妻が事実、自分の言動によって傷ついているにも関わらず、自分には問題がないと盲目になっていた自分自身に気づき、認めることです。
自分本位、自己中心の自分に気づいて、その時に、自分の妻への愛し方、接し方、話し方にあったトゲがはじめて見えてきます。そして、それが分かって、人ははじめて、改善しようとできるのです。だからこそ、恐れずに自分の本心と正直に向き合います。
問題を他人事にしている限り、決して改善はできません。「妻がこう言ってくるから、こうなったから、直さなくちゃ・・・」の段階では、まだ問題は他人事です。問題を自分の問題にする。これがスタートです。
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