【相談事例】母から不本意な悪口を言われ続ける。母が憎くてたまらない。

2021/08/18親子関係, 想いの箱(悩み相談)

【相談内容】

同居の母が周囲の人に自分の悪口を言う。自分がどれだけ母を手伝っても、母は周囲の人(親戚や近所)に、「娘は何もできない」と不本意なことばかり言う。ただの嘘なので、ほっておこうとは思っている。ただ以前、うつ状態になり、本当に苦しんでいる時にも助けてくれなかった過去のことを思い出すと、嫌な思い出が蘇ってきて、苦しい。家を出ようかとも考えている。(40代 女性)

今回の相談は親子関係です。親子関係の場合、それ以外の人間関係と違って、少し特殊です。夫婦関係ともまた違って、親子関係だけは唯一「生まれた時からつながっている」という特別な人間関係なんです。

いい意味でも悪い意味でもあまりにも「親しみ」がある関係でもあるので、もはや無意識に子(もしくは親)をまるで「自分のもの」のように扱ってしまいがちです。その結果、喧嘩や衝突が起こります。

近すぎる関係だからこそ、知らず知らずのうちに、自分のストレス発散の対象として、また、自分の存在を承認させる対象として、子供や親を用いてしまうこともあるんです。

母親の課題をまずは切り捨てる

今回のケースのように、母親が「娘は何もできない」と周りに言うということは、2つの理由が考えられます。まずは、本当に母親の基準では、「娘は何もできない」と思っているということです。人は勝手に自分のものさしを当てて、人を裁きます。大多数が評価することでも、数人のAさんと、Bさんは落第点をつけるなんていうことは、人間社会ではありうることです。

人は勝手に自分の主観と価値観で、人のできている、できていないを見てしまいます。誤解してはいけないのは、あくまで母親にとって「何もできない」と判断しているだけであって、それができているのかできていないのかではないのです。ただ、今事実として、母親にはそのようにしか判断できない可能性があります。

そして、もう一つは、これはより心理面の話ですが、母親自身が「母親としての存在」を承認するために、娘を利用している可能性があります。娘がどんなに自分を助けてくれても、「娘は何もできない」とすることで、初めて自分の存在を認めようとする心理です。

確かに、娘の立場にとってはとんだとばっちりです。ただ、相手に何が起きているのかを冷静に理解することは、自分の気持ちを整理することにも役立ちます。

お話を深く伺っている中で、実際にこのお母様は夫婦関係に苦しんだ経緯があり、ご主人から暴力を受けていました。まさに「存在を否定されるようなこと」を受け続けてきた過去がありました。存在否定は死活問題です。存在否定の苦しみから逃れるために、自分には存在価値があることを何としてでも得ようとします。しかし、時にそれは健全な方法ではなく、歪んだ解決方法を選んでしまうこともあるのです。

一つ目の可能性であれ、二つ目の可能性であれ、これらはすべて母親自身の課題です。本人に問題認識がない限り、他人は関与出来ません。相談者にとって、まず重要なのは、他人の課題と自分の課題の分離です。その上で、母親から言われる悪口や嫌がらせに振り回されて、相談者本人が悩み苦しんでしまっている点を見ていきましょう。

そのままの自分を十分に認めることを始める

では、なんで苦しんでしまうのでしょうか?

一言で答えるなら、それは母親から言われることを「受け入れてしまっている」からなんですね。頭の中では、「嘘つきの母親」と定義していても、言われる筋合いのないことを言われ、腹が立ったり、情けない気持ちになっています。もちろん、これは自然な反応です。

自分の心がお母様の評価に少なからず、影響を受けてしまっています。

では、次になぜ影響を受けるのでしょうか?それは、相談者本人が、自分自身を十分に認められていない可能性があります。

本当に自分を肯定的に捉えることができる時、他人からの評価はあまり気になりません。他人に批判されようが、自分が自分を十分に認められる時、自分は既に満たされているので他人の評価など、あんまり気にならなくなるのです。逆に言えば、他人からの評価が気になる時は、自信のなさや、不安、無価値感などを感じる時です。

なので、このお母様との関係をどうしよう?と悩む前に、まずは自分自身のことを自分でしっかりと認めることを始めてみましょう。

自分が正しいことをしているなら、他の誰がなんと言おうと、「これでOK、私はこれでベスト。私はできるところまでやった。」と認めてしまいます。

それ以上でも、それ以下でもありません。最終的に自分にイエスを出せるのは、自分しかいません。ただの嘘なので、ほっておこうとは思っている。という気持ちまで出てきているので、もう一息です。あとは、その思いを邪魔する過去の気持ちを整理していけば、随分と楽になれますよ。

今を変えて、過去をアップデートする

過去の辛かった気持ちが蘇ってきて、苦しくなるというのは本当に辛いですよね。人は自由自在に記憶を呼び起こせます。特に過去の嫌だったこと苦しかったことは、感情に大きく影響を与えているので、記憶はしっかりと残っていることが多いのです。

これらの記憶は、自分が「自分の課題」に立ち向かって、自分自身が成長するという変化を起こしていかない限り、残念ながらいつまでも自分ついてきます。

過去の嫌だった記憶を消し去るには、「今」で上書きすることです。大学受験のシーズンに、あんまり勉強が好きではなく、辛い思いをしながら勉強してきた人が、「合格」という結果を手にいれた途端、すべてから救われたような気持ちになり、辛かった受験勉強を忘れます。依存症で苦しんでいた当本人が、お酒やギャンブル、タバコとぴったり縁を切る生活に戻って、再び元気になると、今までの人生に対する恨み辛みも感じなり、今まで忘れていたかのように人生を謳歌し始めます。人は結局「今」の状況にものすごく左右されるんですね。

「今」の上書きで、過去への思いは変わっていきます。「今」が変化することで、過去の見方、過去への定義はどれだけでも変わってくるんです。

その「今」を変えるためには、様々な出来事が与えてくれた課題と向き合っていくことです。「今」を変えるとは「今」、怒るか、怒らないか、「今」、言うか、言わないかを選ぶくらいに差し迫った選択のことです。

相談者の気づき

カウンセリング中に、相談者が自分の心の痛みと向き合う中で、相談者自身、「母親からの承認」を自分はどこか求めていたことを認められました。そして、どうしようもできない母親の(性格上)の問題にどれだけ振り回されていたんだろうと気づき、さらにどこか母親に依存していた自分がいたとも気づかれました。

人は、自分で気づくことができてはじめて、課題に向き合うことができるようになります。

過去の辛かったことは、「今」を変える行動を少しずつとっていく時、徐々に取り除かれていきます。自分の変化を信じて、前に進み続けていってください。