他人が自分の境界線へ侵入してきた時の対策:スルー力を高める

2021/08/19境界線の引き方, 気持ちとの向き合い方

こころの栄養では、「境界線」の話をよくします。

境界線の基本は、次の2つ。

1)他人の領域に入らないこと
2)自分の領域に他人を入れさせないこと

です。

1)は、他人の境界線、他人の選択、他人の行動、他人の人格に入り込まない・・・つまり人を変えようとしないことで、2)は自分の選択、自分の行動、自分の人格に対して、人を受け入れない・・・つまり人に流されないことです。

人間関係の問題のほとんどは、他人の領域に入り込みすぎか、つまり変えられないものを変えようとしているか、自分の領域に他人を入れ込みすぎ、つまり自分を他人に明け渡してしまっていることで生じます。

だから、こころの境界線は、とても大切なんです。

今回は、2)について見ていきたいと思います。

自分の境界線に他人を入れさせない方法は、

スルー力

を高めることです。

でも、これはすごく誤解されがちで、

スルー=無視ではない

です。

家族の中に、アルコール依存症の問題を抱えた人たちが、共依存、イネイブリングと言う言葉を知った時に、
突然相手を無視し始めたりします。

すると、問題はもっと大きく、むしろ怒りを何度も爆発させてしまうことがあります。

スルーとは、英語の元々の意味、

「~を通過して、~を通って、~を通り抜けて、~の中を通って」

です。通過するんです。それは、人間関係の流れを詰まらせないってことなんです。
喧嘩とか、衝突とか、葛藤とか、そういう詰まりがなく、さらっと水が流れていくこと、これがスルーです。

たとえば、夫から、

「お前、本当に馬鹿だな。こんなことして。」

と言われたとします。

ちなみに、こころの栄養では、これは境界線違反です。

相手の人格に対して、踏み込んできて、勝手に馬鹿とか定義しているからです。

これを聞いたあなたはムッとするかもしれません。ムッとするのは人間の感情なので仕方ないのですが、ムッとしてムッとし続けるのは、スルーできていない証拠です。
ムッとし続けると、その言葉に止まります。水の流れを止めて、その言葉に向き合おうとしてしまいます。

ムッとした結果、あなたはその場で相手のことを無視するか、かわすか、反論するかもしれないですが、いずれも、スルーできていないんです。

血管の流れがあったとしたら、一瞬で血の流れを滞らせてしまっている状態です。

スルーするとは、その言葉自体、発した人のもの、発した人の問題であると理解し、スルーするんです。
言葉の所有者はそもそも発した人のものです。

暴力的な言葉を口にする人は、心の中に暴力的なものがあります。そして、暴力的な心を所有しているのは相手です。だからスルーするんです。

スルーするとは、流れをとめないことです。

向き合うことでも、無視することでもないんです。

スルーするとは、問題を大きくせず、相手とその時間を通り抜けることにフォーカスするんです。水に流して、時の流れにまかせていくんですね。

もし先ほどの発言が酔っ払いの発言で、寝る直前で、そのまま特に反応しなければ、相手も寝入って、流れていくようなものでしたら、そうするんです。

言われたことがムカつくとか、なんでそんなこと言われなくてはいけないの!と腹をたてるのは、スルーではありません。口では言わないけれど、歯を食いしばって我慢することもスルーではないです。

「どうでもいいことはどうでもいいこととする」と言ったときに、前提条件である、「だってそもそも、どうでもいいことじゃないもん!」と言う人が、スルーできない人の特徴です。

どうでもいいことは、あなたがどうでもいいことと感じられるか、感じられないかに関係なく、境界線の侵入は全部、どうでもいいことなんですね。

あなたの容姿について言ってくる人、あなたの人生について言ってくる人、お節介な人、うるさい人、嫌みたらしい人・・・みんなどうでもいい人です。所有していないあなたの人生に対して、あなたが欲しくもない悪いことをあれこれ言ってくる人は、どうでもいい人なんです。

スルー力が高まると、時の流れを武器にできて、くよくよ悩むのがぐ〜んと減ります。

悩みは、ある程度時間が解決するものも多いんですね。時間が経たないと、どうしても癒えない外傷があるように、心の痛みも時間の経過がどうしても必要なことはあるんです。スルー力は、この時間の流れを有効にしてくれます。

スルーすることで、時間の流れを止めず、進んでいけるんですね。逆にスルーしないと、心の中で時間を止めてしまい、苦しみに留まってしまうんです。

それはとても辛いこと。

自分の人生を大切に、時間と共に、前に進んでいきたいなら、スルー力を高めてください。