薬物依存症の娘どうすれば?借金の肩代わりをしている親の対応について

家族との関わり方

今回は、頂いたお便りに回答します。

娘は薬物依存症です。これまで刑務所に2回入りました。娘が借入をしていた金融機関から次々と連絡が来て、もうこれ以上払えません。娘は刑務所で辛い思いをしているのではないかと思い、お小遣いを渡しています。上の娘から、借金を返すなと言われましたが、親の気持ちはそんなことできないんです。

                                 (60代 男性)

まずは、こちらを↓読んでみることをおすすめします。全部で48ページと長いですので、スキップしたい場合は13ページから読んでみてください。厚生労働省発行のPDFです。

ご家族の薬物問題でお困りの方へー厚生労働省

特に重要なのが、15ページに書いてある「2、薬物依存症と家族の悪循環」という章です。下記に、引用しますね。

身も心も疲れ果て、誰にも相談できない状態にありながら、大切なご本人をなんとか立ち直らせようと必死になっているご家族の姿は、薬物依存症からみると格好の利用相手です。
ご家族が、これを機会に立ち直ってほしいと心から願って「今回だけだよ」とご本人の作っ
た借金の肩代わりをしてあげたとしましょう。そうすると薬物依存症は「これでまた借金ができる」「また薬物が買える」と大喜びです。たとえご本人の心が感謝の気持ちでいっぱいで、ご家族のためにももう二度と薬物を使わないと固く決めたとしても、そんなことはなんの役にも立たないのです。それほどに薬物依存症という障害は強い力をもっています。

家族思いで、家族の幸せを心から願っているからこそしてしまう行動が、本人の回復を妨げ、依存を進めてしまう危険があります。

借金の肩がわりは絶対に、NGです。

良かれと思ってやっていることが、依存症の進行を助け、ますます依存を強めてしまいます。貸せるお金がある・ないは関係ありません。金額の大小も関係ありません。

これだけと思って貸した借金が、いつまでも続き、金額が増え、頻度は増え、ついにはあなたが自己破産して、自分の生活がままならなくなって、助けるどころか、自分まで病気になってしまっても、まだ薬が欲しいと言ってきます。

依存症は、病気です。本人がコントロールができなくなっています。周りの人の一時的な援助など、全く意味がないどころか、問題を抱えたまま過ごすことをまた1日助け、許容してしまいます。

借金を肩代わりするな!と聞いて、目を伏せたくなるような気持ちなら、まずは、依存症という病気をわかっていないのだと認めて、依存症という病気を知ることから始めてください。

人間関係の境界線

サポートをやめるなんて、心を鬼にするとか、歯を食いしばって、無視をするとかそんな風に考えてしまうかもしれません。罪悪感を抱くことも、無力感に感じることもきっとあると思います。「本当はできるのに・・・。」と思って、助けない自分が、非情に感じるかもしれません。でも、助けないことが結果的に助けていたり、助けないことが、本人の依存を断ち切る後押しをしてくれる選択肢になりうるのがこの病気の向き合い方です。

助けることのできない自分ではなくて、本当に心から助けたいからこそ、自分のやり方で何とかしよう(助けよう)としないんですね。

「自分がなんとかしたら、依存症を治せる。」この考えから抜け出し、家族は自分自身の問題に向き合い、依存症者は自分自身の依存の問題に向き合うこと。

問題と責任を取らなくてはいけない相手を一致させていくんですね。

今まで十分、一生懸命やってきました。辛い思いもいっぱいしました。もっと助けてあげたい、もっとお金を出せれば・・・と思ったこともあったと思います。

過去は過去でそれでいいんです。今からやめていきましょう。自分を傷つけ続けることも、自分の『援助』を通して、依存症の回復を妨げることもやめることができます。これは選択です。

長い年月をかけて依存症と言う病気と戦っていますから、回復も長い年月を要します。途中アップダウンがあって、調子が良くなったり、悪くなったりします。うまくいったと思って、また逆戻りしてしまうこともあります。あって、当たり前です。

依存症は、今日明日でなんとかなる病気ではありません。たとえ薬物依存が止まっても、本人が人生の中に喜びや幸せを見出し、社会と自分を適応させていくのは、まだ課題が残っています。

薬物を憎むことも、「薬物さえとらなければ・・・!」と思うことももうやめにしましょう。本人の考え方、性格、環境、決断などなど、変化を要することは他の側面もあるんです。

今日から、薬物依存症の回復を本気で援助するために、借金の肩代わり、お小遣いなどの金銭『援助』をやめましょう。

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