「上司嫌いだから会社辞める」に隠れている自己欺瞞
自己欺瞞について。心理学やこころをテーマにした話題ではよく出てくる言葉です。
ただ、この「自己欺瞞」という言葉自体、あまり馴染みのない人もいるかもしれないので、まずは国語辞典から意味を引っ張ってきました。
1、自分で自分の心を騙すこと。
2、自分の信条や良心に背いたことを無意識で行う場合にも、意識しながら強いて行う場合にもいう。
(精選版 国語大辞典)
とのこと。
1、のポイントは、まさに文字通りだなって感じだと思います。本音はノーなのに、イエスというようなものです。
2、のポイントは、まず2種類あるということ。一つが「無意識」の時。つまり、問題があるとすら知らない状態。「なんでこんなに苦しいのかわからない」、「なんでこんなに怒っているのかわからない」という得体のしれない心の葛藤を抱く時は、この「無意識」の分類に入ると思います。
そして、もう一つが、「意識しながら」の時。これはまさに、問題があると知っていながらすること。嘘をつくこと。サボること。騙すこと。本当はやるべきでないと思いながら、すること。正常な状態だと、自分の良心に逆らうことが段々としんどくなってきます。
例として、
「上司は最低と思っているのに、上司に愛想を振る舞う。」
を考えてみます。
上司のことが嫌い、上司が嫌だ、顔も見たくない・・・と思っているけれど、でも様々な理由や目的から、行動は上司に愛想よく、笑顔で過ごす・・・・。
次第に「会社を変えようか・・・」とか考えたりします。なぜなら、本当は最低と思っている上司に対して、「愛想を振る舞い」続けるのは段々と苦しくなってくるから。
「愛想を振る舞う」のは自分にとって、嘘の感情だから、「会社を変えて、上司を視界から消そう!」って方法を考えているわけです。
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でも、ちょっと待ってみてください。
今回取り上げたいのは、実は、もしかしたら、「上司は最低!」と思っているところに自己欺瞞があるかもしれないということです。
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何が一番悩みの種かというと、あなたにとって、「上司は最低!」であり、「上司は最低!」と思うことですよね。このことが、あなたの心をめちゃくちゃ重たくしています。
こころの栄養はいつも「軽く」考えます。「軽く」考えないと、悩みのどつぼにドンドンはまっていってしまうから。
そこで、「上司は最低と思っているのに、上司に愛想を振る舞う。」の文章を、左側と右側に分解してみます。
左側が「上司は最低と思っている。」
右側が「上司に愛想を振る舞う。」
です。
左側の文章と、右側の文章のどちらが重たいですか。
上司に囚われすぎると、こころは冷静に考えることができないので、主語を適当に入れ替えてみて考えてみてください。
もし気持ちが重たいのは、左側の「上司は最低」の方だったとしたら、「笑顔で上司と接するのが辛いから、会社を変える!」のではなく、本当に辛いのは、自分自身が「上司は最低」と思ってしまうことにあるということ。
ここに自己欺瞞が潜んでいます。だって、「上司は最低」と考える思いこそが、あなたの気持ちをずっしり重くするから。
左側の部分(自分の気持ち)だけ、こころ感じるままに肯定して、右側の部分(実際の行動)だけを無理に変えようとすると、悩みはずっとついてきます。
なぜなら、人は感じて、行動するから。そして、肝心な「感じる」左側の部分については、右側の行動を適当に変えてしまうことで、放置状態です。
だから、たとえ会社を変えたとしても、今度は別の誰かに葛藤することになる可能性は十分にあります。そうすると結局また悩んでしまいます。
行き場を失うと、もう開き直るしかなくて、「完璧な人はいない」とか「みんな欠点はある」とかの綺麗事やありきたりな言葉をこころに言い聞かせて、自分の感情を麻痺させようとするかもしれません。
自己欺瞞は、実際にやっている行動部分(右側)だけでなく、自分がこころの中で思っていること(左側)も十分欺瞞になりうるんです。
左側の気持ち(「上司は最低だ」と思うこと)になってしまったのは、もしかしたら、
✔︎本当は自分にはめちゃくちゃ劣等感のコンプレックスがあったことを思い出させたからかもしれないし、
✔︎人から認められないことが嫌で、すごく人からの評価をばかりを気にしてしまったかもしれないし、
✔︎同僚と比較ばかりをしていたからしれないし、
様々な理由があると思います。
実は、上司そのものの人格や、上司との人間関係以前に、自分の感情の未処理の部分が、たまたま上司という存在で顕在化してしまっただけかもしれません。
自分のこころのどこかにずっと抱えていた葛藤が、上司の態度や言動、仕草によって、刺激され、結果的に「上司が最低!」に繋がった・・・のかもしれません。
そうなると、もはや問題は上司ではなくて、結局自分ごとになってきます。
すると、別に「上司は最低!」と思うこと、上司に焦点を当てることはそこまで重要ではなくなっていき、上司からは解放されていきます。
左側部分(自分の感情)にちゃんと向き合って、初めて悩みは乗り越えられるんです。
もし、今悩んでいることで、あの人嫌い、この人嫌いみたいな思いがあるなら、その人と関わる行動についてどうこう考える前に、いきなり行動を変えようとする前に、
「あの人嫌い」「この人嫌い」という思いこそ、もしかしたら自己欺瞞そのものかもしれない
と一度疑ってかかってみてください。
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